Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~

「すごいな、新聞の切り抜きがこんなにたくさん……こんな風にして自分なりに事件を追ってたんだな」

スクラップブックをめくりながら、学くんが驚嘆する。
私も旅行カバン探しは中断、すっかり箱の中身の方に関心を奪われていた。

「そういえば、警察は何も教えてくれないってよく愚痴ってたの覚えてる」

だからお母さんたちは新聞や週刊誌を買い込んできて、自分たちで情報収集しなきゃならなかったんだ。

「富田が怪しいんじゃないかってことも、週刊誌のスクープで知ったんだよね」

付箋がいくつも貼られた雑誌、変色した新聞の束、月ごとにナンバリングされたスクラップブック……
中身を一つ一つ取り出して、眺めていく。

事件の解決をただひたすらに願い続けたお母さんの執念が蘇ってくるようで。
こみ上げるものを抑えるのが大変だった。


「……ん?」


次に手に取った1冊のノート。
何気なくパラパラと目を通すうちに、これはなんだろう、と疑問が膨らんだ。

新聞の切り抜きが貼ってあるものの、一つ一つ内容を見ていくと、どう見ても事件とは関係なさそう。

だってこれ、株価とか経営統合の話とか、思いっきり経済記事。
一体どうしてこのノートだけ……

疑問を抱えたまま、赤ペンで丁寧に線が引かれた企業名を流し読む――そうするうち、やがてなんとなくお母さんが何をチェックしていたのかがわかってきた。

これ、全部リーズグループの関連企業だ。

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