Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~
13. 疑惑と追及
「リーズメディカルの社員?」
そう、と私は頷いて、記憶を辿る。
スーツ姿の2人組だった。
お父さんの恩師の名前を出してきて……「A大学の〇〇先生の紹介で、ちょっとお話ししたいことがある」とか、そんな感じで来たんじゃなかったかな。
お父さんは全くわけがわからない、って顔してた。
でも「教授の紹介なら、話だけは聞くか」、ってことでリビングに通して……。
驚いたのは、その後だ。
――帰ってくれ! 金さえ積めばなんでも思い通りになると思ってるのか。冗談じゃないっ、二度と顔を見せるな!
何を話し合ったのかわからないけど、しばらくして部屋から出てきたお父さんは烈火のごとく怒っていて、すぐに2人を外へ追い出してしまう。
そんな怖いカオのお父さんは初めてだった。
唖然とする私やお母さんの前で、名刺をビリビリ破ってゴミ箱へ投げ捨てていて。
気になったから後からこっそり拾って、社名を確かめたのよね。
「金さえ積めば思い通りに……確かに意味深な台詞だね。じゃあおばさんもそれを覚えてて、おじさんの事件にリーズメディカルが絡んでるんじゃないかと思ってたってこと? だからこんな風にグループの業績やらなにやら、詳しく調べてたと?」
「そうかもしれない。ほら、うちのお父さんてあの塾を始める前、大学で生物工学の研究をしてたでしょう? もしかしたら、リーズメディカル側から何か頼まれたんじゃないかな。ほら、違法な……実験とか、データの改ざんとか? それをお父さんが断って……」
思いつくまま勢い込んで自説を披露すると、学くんは目を丸くし、それから笑い出した。
「それはさすがに妄想が逞しすぎるよ。ドラマや映画じゃあるまいし。大体、万が一頼むとしても、現役の研究者に頼んだ方がいいんじゃない?」
「あ。そ、そっか……やっぱり、そうだよね」
しゅんと肩が落ちた。
もう少し、お父さんが何に対して怒ってたのか、あの時具体的に尋ねておけばよかった。今更とはいえ、悔しいな。
「さぁ、そろそろ戻らないと、病院の面会時間終わっちゃうよ?」
時計を見ると、本当だ、間に合わなくなりそう!
「わわ、急がなきゃ!」
私は慌てて散らばったノートやファイルをかき集め、ぽいぽい段ボールへ戻していく。