Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~

もう外れたはずなのに、私の上にある身体は一向に動いてくれない。
私をシートに囲い込むように窓に手をついた状態で固定され、頭の中は“?”で埋め尽くされていく。

「……まなぶ、くん?」

上目遣いに伺えば、くっきり二重のバンビアイがじっと至近距離でこちらを見つめていて、なぜか鼓動が騒ぎ出す。

え、え、これって……何?

外気温とは真逆の、ジリジリ焼けるような視線。
若干艶を帯びているような、って、気のせい……?
え、気のせいだよね?

当たり前でしょ。学くんだよ、王子様だよ?
私なんか相手にするわけ――

「茉莉ちゃん」

「は、はいっ?」

裏返った声で叫んだ私は、訳も分からないまま緊張した視線を上げた。


「茉莉ちゃんとご主人ってさ」

「わ私と、クロード、さん?」


「……まだカラダの関係、ないんだね?」


全身がピシッと固まった。

「キスか、もう少し先まではいってるかもしれないけど、最後まではまだ(・・)。違う?」

「なっどうし――」

口をパクパク開閉させて二の句を継げないでいる私を、意地悪な微笑が見下ろす。

「わかるよ。君の反応を見ていれば、ね」

囁くように言いながら、さらに近づいてくる綺麗な顔。
耳元で軽く息を吹かれて、ビクッと肩が小さく跳ねた。

恋人同士の戯れみたいな仕草に、戸惑いが止まらない。

どうしてこんなことするの?

「や、っ……その、彼はただ、私の気持ちとか身体とか、大事に考えてくれてっ……っていうか、冗談はやめてよ。早くどい――」


「僕じゃダメかな」


「…………へ?」


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