Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~
「僕のことは、恋愛相手として見られない?」
「……か、揶揄わな、――」
「揶揄ってない、本気だよ」
注がれる眼差しはどこまでも真剣で――笑い飛ばすこともできなくなってしまう。
「僕だったら、絶対君にそんな顔させない」
「そんな、顔?」
「ここに着くまでの間、ずっと不安でたまらないって顔してたよ。信じられないんだろう? 各務の愛情が、本物かどうか」
「それはっ」
「違うの?」
「っ……」
迫られて、返事に窮した私は視線を泳がせた。
違わない。
刑事さんが来たことをまず話して……各務蔵人の名前を出して……クロードさんがどう反応するか。
冷静に最後まで話し合うことができるか……不安でたまらない。
「アメリカにいる時も、ずっと君のことを考えてた。そして再会して、この気持ちが恋愛感情だって、自覚した」
「っ!」
「まさか横から搔っ攫われるとか、想定外だったけど……もう後悔したくないんだ」
切なげな光を湛えた眼差しが、私を見据えたままゆっくりと近づく。
「えぇと、あの……」
のけぞるようにして距離を取ろうとするが、狭い車内ではこれ以上下がれない。
ジワリと冷や汗が滲んだ。
否応なく上がっていく心拍数。
けどそれは、トキメキではない。
ただの動揺で。
それがわかっている私は、上手く回らない口を無我夢中で動かした。
「あの、あのねっ、学くんには本当に感謝してるの。火事から助けてくれたし、入院中も励ましてくれたし、大好きな初恋の王子様でっ……でも、でもねっ……」
ガンッガン!!
凄まじい音と共に窓ガラスが勢いよく叩かれ、ひゅっと口を噤んだ。
いつの間にか視界が暗く翳っている。
それが窓の外に仁王立ちする誰かのせいであると知り、慌てて視線を動かした。
「クロードさんっ!?」