Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~
「何しろ、これから、って時に邪魔されちゃったからね」
「学くんっ」
「まぁでもよかったよ。お前のそんな余裕ない顔を拝むことができたんだからさ――なぁ、各務」
刹那。
目の前にあったクロードさんの身体へ、緊張が走るのがわかった。
あぁやっぱり彼は、各務蔵人本人なんだ。
わかってたこととはいえ、改めて事実を目の当たりにした私は、すぅっと指先まで冷えていくような感覚を味わった。
「そう言えばよくわかったね、僕たちがそろそろ着くってさ。コートも着てないし、エントランスででも待ち伏せしてたのかな――あぁまさか、発信機とか茉莉ちゃんにつけてたりしてないだろうね?」
面白がるような口調。
ただしその内容は、かなり物騒なもので……
私は面食らって学くんを見つめた。
そりゃ、今夜は遅くなるって言ってた割には随分タイミングよく現れたような……え、発信機? いやいや、何それ、まさかね?
――宮原さん、身辺には十分気を付けてください。
――あなたが余計なことを漏らしたりしないよう、すでにどこかから見張っている可能性もあります。
トクントクン、と鼓動が不安を奏でる。
「………」
息詰まるような沈黙が続いた。
クロードさんは何も言ってくれない――