Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~

何から話せばいいんだろう。

とりあえず、学くんのことは申し訳ないけど二の次として。

まず刑事さんが訪ねてきたことを話して、各務蔵人のことや、私の誕生日の夜どこにいたのか確かめて……


頭の中でシミュレーションを繰り返し、気詰まりなエレベーターから降りる。
広いその背中は無言のままこっちを拒絶しているようで、ますます気力が削がれていく。

それでももちろん、話し合わなきゃ。
私たちのこれからがかかってるんだもの。

ちゃんと彼も、本当のことを話してくれたらいいんだけど……

こぼれそうになるため息をぐっと堪え、彼が開けてくれたドアから玄関に入る。
自動で灯りが点灯し――あっという間だった。

繋いでいた手を引っ張られ、閉まったドアへと強引に縫い留められ、荒々しく唇が塞がれる。

「ぅんんっ!?」

頬をがっちり押さえられたせいで、逃げることも顔を背けることもできず、身をすくめたまま、ただキスを受け止める。

「くち、開けろ……っ」

これは何? 何のキス?
嫉妬?

狼狽で緩んだ歯列を半ばこじ開けるようにして、侵入する舌。
瞬く間に私のそれを探り当て、淫靡に絡めてくる。

「ん、ぅ、……はっ」

角度を何度も変えながらわずかな呼吸すら奪われる勢いで貪られて、足ががくがくと震え、たまらず自分から彼のスーツに爪を立てて縋り付いた。

「そうだ、掴まってろ。まだまだ、足りない」

独善的とも言える囁きが、口の中へ直接流し込まれる。

苦しくて、じわりと生理的な涙が滲んだ。

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