Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~
歪んだ視界に映るのは、神様に愛された美貌の、けれどどこか昏い眼差し。
信じていいのかな、そこにあるのが嫉妬だって。
学くんに嫉妬してくれたんだって。
それはつまり、私のこと……
――信じられないんだろう? 各務の愛情が、本物かどうか。
わからない。
わからない。
こんなに激しい口づけで求められて、嬉しいのは間違いないのに……
逞しい身体に必死にしがみつきながら煮立った頭で考えていると、抵抗がないのをいいことに、彼の手は私のコートのボタンを片手で器用に外し始める。
瞬く間にコートが、カバンが、音を立てて床に落ちた。
ニット越しに触れる、彼の熱い手を感じた。
「っン、……」
肩から胸、ウエストから足へ……欲望を掻き立てるようにいやらしく撫でまわされて、自分の意志とは関係なく身体の奥で何かが疼く。
「まりか、……」
熱っぽい吐息がまとわりつくように首筋を這い、私は恍惚と天井を仰ぐ。
これは、ダメだ。
昨夜と同じ展開になりそうな予感を覚え、甘美な愛撫に絆されてしまいたくなる自分を懸命に叱咤する。
今の私は、昨夜の私とは違う。
今の私は、いろんなことを知ってしまっている。
この結婚に裏があるんじゃないかと、疑ってしまっている。