Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~
「じゃあ……富田のことは? 殺される前に連絡を取ってた“カガミ”っていうのは、本当にクロードさんのことなんですか?」
「……あぁ、そうだ」
こちらもあっさり肯定されてしまい、想定内とはいえ、やっぱり衝撃が走った。
「まさか、ずっと居場所をご存知だったんですか?」
犯人が富田か、富田以外の誰かなのかはわからない。
ただ富田が、事件の解明に欠かせないキーパーソンだったことだけは間違いない。
「居場所を知ってたのに、黙ってたってことですか? 警察にも、私たち遺族にもっ……」
言いながら、苦しかった日々が脳裏を過る。
どんどん痩せていくお母さん、
笑わなくなった柊馬、
疲れた顔で笑うおばあちゃん……
お母さんはとうとう体調まで崩して、お父さんを追うように亡くなった。
私も柊馬も、人生が大きく変わった。
あの事件が、変えてしまった。
「富田が見つからなかったから、事件はずっと未解決のままだったんですよ? 警察は、他に真犯人がいるのかもって言ってましたけど、富田が殺されちゃったら、もしかしたらこのまま迷宮入りになっちゃうかもっ……」
感情の高ぶりそのままの、ブレまくった声がリビングにこだまする。
恥ずかしいとかなんとか、考える余裕はまったくなかった。
そんな私の心情を、彼もわかっていたんだろう。
こちらが一息つくまで待ち、それから静かに口を開いた。
「富田は、犯人じゃない」
「……え?」
「茉莉花だって言ってただろう。お義父さんが、面識がないはずの富田を家に招き入れるのはおかしい、と」
「それは……」
その通りだ。
加えて、放火の前科のこともそうだし、ライターが見つかったこと、当日のアリバイがなかったこと、そのまま姿を消したこと……富田に不利な状況ばかり積み上がっていって、出来すぎてる、って思ったことは何度もある。
ある、けど……。