Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~
「し、信じませんから!」
ついに、立ち上がって叫んでしまった。
「私、知ってるんですよ? クロードさんがあの夜うちに来たこと。火事が起きた後だったんでしょう? お父さんに手を出せたはずはありません!」
「っ……思い出したのか? あの日の事」
束の間仮面が剥がれて、彼の表情に生気が戻る。
なんとなくホッとして、「学くんが教えてくれました」と続けたけれど。
どうやらそれは、彼の望む答えではなかったみたい。
落胆したように表情を曇らせる彼に、もどかしい思いが募った。
「ちゃんと言ってくれないとわかりません、どうしてそんなめちゃくちゃな嘘つくんですかっ」
「嘘じゃない」
嘘、という言葉が効いたのか、今度はすぐに反応があった。
強い感情のこもった漆黒の双眸が、私を見上げる。
「先生を殺したのは俺だ――実際に手を下してはいなくても」
……ん?
え? え?
手を、下していない?
思考が一時停止する。
そして。
「じ、じゃあ殺してないじゃないですか! 犯人なんかじゃない」
なんだ、やっぱり冗談だったの?
ドッと脱力する私。
ところが彼は、そんな私を全否定するように真剣な面持ちで首を振った。
「同じことだ。俺のせいで、先生は狙われた。死ななきゃならなかった。俺が殺したようなものだ」
俺の、せいで……狙われた?
何それ、どういう意味?
数秒口を閉じて続きを待つが、彼は何も言ってくれない。
我慢できずに、「あの」と声を上げた。
「ちゃんとわかるように説明してくれませんか? うちの父とクロードさんの間に、どんな関係があるっていうんですか? 富田絡みですか? でもさっき、富田は犯人じゃないって言ってたじゃないですか」