Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~
別居の申し出があった日から丸5日が過ぎたその夜、私たちはそれぞれの自宅からリモート飲み会を開催していた。
事の発端は、今朝香ちゃんからかかってきた電話。「バレンタインのチョコもう買った?」って。
もちろん、あの日以来引きこもる日々を送っていた私はバレンタインどころじゃない。
この5日間は、現実を受け入れようと努力するもなかなか上手くいかなくて、泣いたり落ち込んだり、考え込んだりを繰り返して、メンタルは落ちる所まで落ちた、みたいな最悪の状態だったから。
さすがに5日目ともなると、最初の3日間よりはマシになっていたけどね。
それでもやっぱり、電話は終始上の空になってしまって。
すると何を思ったのか、「うちの兄貴が何かしたの!?」って問い詰められたんだよね。
彼の気持ちはもともと香ちゃんも承知してたそうで、人妻だからって遠慮するような兄貴じゃない、って心配してくれたみたい。
「そういうことじゃない」ってちゃんと否定したんだけど。
すぐに「じゃあどうしたのよ!」、「知依も誘って飲みに行こう」、「話聞くから」、と畳みかけられて、断れなくなって。
せめてもの抵抗で外に出たくないんだって渋ったら、リモート飲み会ってことになったんだ。
富田とクロードさんを巡るもろもろの事情をその場で話すかどうかは、ギリギリまで悩んで……。
結局、自分一人で悶々としてるより誰かに聞いてもらいたい、その方が頭の中も整理整頓できるかもって思って、打ち明けることにした。
2人とは、過去にも散々事件について話し合ってるしね。
というわけで今ようやく、刑事さんが訪ねてきたところから始まり、クロードさんとのやり取りまでを2人に説明し終わったところだ。
『“俺のせいで”おじさんが狙われたって、どういうことかな。そこがすべての始まりじゃない?』
『例えば……真犯人は、富田の、さらに上にいるヤクザだった、とか? ほら、各務少年が仲間を抜けようとしていることを知って、おじさんがそそのかしたって逆恨みしたのかもよ?』
「なるほど。ヤクザ、かぁ。富田は拳銃で殺されたらしいし、可能性はあるかも」