Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~
私も知ってる、となるとまさか小学校の時のクラスメイト?
あとは、せいぜいブルームーンあたり……まさか柊馬じゃないよね??
「誰誰? はっ! もしかして、マスターとか!?」
『違う違う。ええと、トミー、って呼んでるんだけど』
「と、トミー?? 私、ほんとに知ってるの? その人の事」
『知ってると思うよ。彼は茉莉花のこと知ってたから。「柊馬のお姉さんでしょ」って』
柊馬の知り合い、なんてやっぱりブルームーン絡みか。
……段々わかってきたぞ。
「もしかしてあの彼? 新しくバイトに入った、留学生のコ」
そういえば、そんな風な名前だったっけ。
『あたり! やっぱりわかっちゃう?』と、ちょっと照れ臭そうに笑う香ちゃん。
確かにああいう年下のワンコ系、彼女のドストライクだったかも。
『まだどうなるかわからないけどね。デートに誘っても、反応薄いしさぁ』
「でも諦めるつもりないんでしょ?」
私よりずっと恋愛にはポジティブな香ちゃんだもん、上手くいく気がする。
「もちろん。頑張ります! この前もね、ようやくラインのID教えてもらったところで……え、彼からメッセージだ! 『仕事終わりました』って」
音を消してて気づかなかったみたい。
いつもはクールな彼女がスマホ片手にアワアワする姿は、結構レア。
なんか可愛いな。
私は微笑ましく眺めつつ、「今日はもうお開きにしよっか。連絡してあげたら?」と提案した。
『えー……うん。そうだね、そうしようかな』
ごめんね、と申し訳なさそうに眉を下げる彼女に「じゃあね」と笑顔で手を振り、“退出”ボタンをクリックした。
途端、室内は一気に静まり返る。
お店で飲んでたわけじゃなから、当たり前よね。