Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~

のろのろとパソコンを閉じ、ソファの上で膝を抱える。

リビング、それから一続きになったダイニングまで。
広い広い空間には、見渡す限り誰もいない。私だけ。

暖房はしっかり効いてる上、アルコールがほどよく回った身体は爪先までポカポカしている。スウェット1枚でも充分温かい。

なのに。
なぜだろう……こんなに、寒く感じるのは。

どうしてるかな、クロードさん。
高橋さんと一緒に過ごしてるのかな。

あれから一度も連絡ないし……って、私が一人になりたいって言ったんだった。はぁ。

「…………」

目の前へ左手をかざし、しばらく無言で眺めてから、その薬指からそっと指輪を抜きとった。

軽すぎる指の心もとなさに、ギュッと左手を握り締める。


もう食欲は、すっかり失せていた。

◇◇◇◇

翌日は、私の心とは裏腹の快晴。

また思考の沼に嵌まる前にとさっそく行動を開始した私は、JRとバスを乗り継いで2時間ちょっとの小旅行を経て、お昼過ぎには桜木さんの自宅付近までたどり着いた。

「たぶんこの辺、なんだけど……」

部屋番号らしきものが書いてないし、たぶん一軒家っぽいよね。
スマホでマップを表示しながら、私は住宅街の中でキョロキョロ。

とはいえ、15年も前の手紙。
引っ越しちゃってたらアウトだ。

一応あらかじめ付属病院に連絡してみたものの、プライバシー保護を理由に在籍してるかどうかも教えてもらえなかったしなぁ。もうここは、当たって砕けろってことで、行ってみるしかない。

不安を振り落とすように拳を握り、再びスニーカーを踏み出した。

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