Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~

「あ、あった!」

ほどなく、私の不安は払しょくされた。
同じ時期に建てられたとみられる四角い家が続く一角に、“桜木”という表札を発見したのだ。

家の前には大小の可愛いプランターが並び、冬場にも関わらず可憐な花が咲いている。
ちゃんと人が住んで、手入れしている証拠だ。

高揚と緊張に胸を高鳴らせつつ、私は門扉の横のインターホンへと手を伸ばした。
すると、まさにその時。


ガチャッ

目指す家のドアが開いて、女性が一人外へ出てきた。

年は、おばあちゃんとお母さんの間くらい?
60代前半、ってところだろうか。

タートルネックの上からダッフルコートを着て、どこかへ出かけるところだったみたい。慌ててお辞儀する私を見て、きょとんと瞬いてる。
「ええと、うちに何か御用かしら?」

「突然お邪魔してすみません。桜木史恵さん、ですか?」
「はい、私ですが?」

「私っ、宮原茉莉花と言います。宮原昌行と晴美の娘です。これは、あなたが送ってくれたものですよね? 覚えてらっしゃいますか?」

言いながらカバンの中から封筒を出して見せると、近づいてきた桜木さんはハッと大きく息を呑んだ――……


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