Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~

――俺のせいで、先生は狙われた。死ななきゃならなかった。俺が殺したようなものだ。

クロードさんは、自分の出生について、リーズグループが絡んでるらしいって、知ってたんじゃないかな。
おそらく養父母かうちのお父さんか、誰かから聞かされてて……それが15年前の事件につながったと考えた。

だから自分のせいで、なんて言ったんだ。

つまり私との関係も、承知の上。
それで、手を出さなかった。

そりゃそうよ。
キスもそれ以上も、妹となんてできるわけない。

好きだ、なんて告白しちゃって、さぞ迷惑だっただろうな――また視界が潤みそうになって、急いで瞬き上を向く。

桜木さんの家に行ってからもう10日以上過ぎてるっていうのに、衝撃はまだ生々しく胸をかき乱す。

もちろんわかってるの。どうせ私たちは離婚するんだって。
どんな事実が明らかになっても、今更だって。

ところが、10日経ってもなかなか気持ちがコントロールできない。
心が受け入れ拒否っていうか、麻痺してるみたいに……。


おばあちゃんにはまだ内緒だからと言い訳して、出かける前、左手薬指にまたはめてしまった指輪を撫でて、吐息をつく。

今日のお見舞いが終わったら、本当に外そう。
そして、離婚届をもらいにいこう。
これ以上ウジウジ後ろを振り向かないために。

窓の外へ虚ろな視線をやれば、街並みも空も、灰色に広がっている。
雪でも降り出しそうなこの寂しく重苦しい空気は、あまり好きじゃない。

こんな塞いだ気分の日は特に……

そうしてのろのろと栞と写真とをスマホケースにしまう間にも、電車は徐々に減速していき、やがてホームへと滑り込んだ。

< 248 / 402 >

この作品をシェア

pagetop