Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~
「え、あれ?」
おばあちゃんが入院する病院を訪れ、部屋までやってきた私は、思わず声を上げた。
もう手術はだいぶ前に終わって、落ち着いてるはず――なのに。
初日にお邪魔した病室に見慣れたその姿はなかった。
リハビリにでも行ってるのかと思ったけど、入口の名札も消えてる。
どういうことかとナースステーションで尋ねると、別室へ移動したとのこと。
その時は、そんなこともあるんだな、くらいの認識だったのに……
「え、何ここっ!?」
案内された先の部屋に足を踏み入れるなり、腰を抜かしそうになった。
一般病棟の喧騒から離れた最上階に用意されたそこは、ドアの外側も内側も、五つ星ホテルのような豪華さで統一された、超VIPルームだったから!
「まーちゃん、来てくれたの?」
「おばあちゃん!」
ゴージャスなソファセット、女王様用みたいなキングサイズベッド、巨大な壁掛けテレビ、高そうな花瓶や絵画、etc.……どこからどう見ても病室とは呼べない空間を足早に横切って、窓辺で手を降るその人へ近づく。
「外、寒かったでしょう?」
最新タイプらしいピカピカの車椅子に座ったお祖母ちゃんは、手術が終わって安心したのかこの前より表情も明るく、元気そうだ。
それはよかったけど……
「ねぇ、この部屋ってVIPルームだよね?」
「すごいでしょう。お食事も特別メニューでね、ヘルシーなのにとってもおいしいの。隣の部屋には、リハビリ用のマシンもあるのよ。そろそろ実際に使えるみたいでね、今から楽しみで仕方ないわ」