Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~

「そっそういえば、お見舞いにモナカ買ってきたの。食べるでしょ?」

無理やり話を逸らすべく紙袋を見せると、おばあちゃんは瞬く間に破顔する。
「あら、いいわねー。お茶、淹れてもらえる? キッチン、自由に使ってちょうだい」

うわ、なんとキッチンまでついてるらしい。
引きつった笑いを浮かべて、「うん、わかった」とそちらへ足を向ける。

クロードさんのバカ。
どうしてそんなに優しくしてくれるの?

これも、過去の贖罪のうちってこと?
お父さんへの償いのため?

でもね、そんな風に特別扱いされたら、私――


「ぁあっ! そうそう思い出した!」

物思いに耽っていた私は、背後の大声にビクッと足を止めた。
「え? 何、どうしたの?」

慌てて振り返れば、興奮気味のおばあちゃんが車椅子を自操して近づいてくる。

「まーちゃんに言おうと思ってたの。この前ようやく思い出したから。全然思い出せなくて、ずっとモヤモヤしてたのよねぇ」

よかったよかったと手を叩かれて、こっちは首を傾げるばかり。
「ええと、何のこと?」

「あなたの旦那様よ!」
「クロードさん?」

「最初に会った時からずぅっと、誰かに似てる誰かに似てる、って思ってたの」

「え、似て、る……?」

芸能人? 友達?
あんな美形が2人といるとは思えないけど……と訝しく首を傾げる私とは対照的に、おばあちゃんは朗らかに口を開いた。


「あの時の男の子よ。あなたを火事から助けてくれた、王子様!」

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