Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~
私を助けてくれたのが、学くんじゃなかったとしたら。
別の人だというなら、考えられるのは……
――実はさ、あいつ、おじさんの事件が起こった夜、現場にいたんだよ。
――最初に会った時からずぅっと、誰かに似てる誰かに似てる、って思ってたの。
15年前のあの日火事の現場にいた、もう一人の男の子――各務蔵人、そうよ、クロードさんしか考えられない。
私は、クロードさんに助けられたの?
じゃあ、その後お見舞いに来て励ましてくれたのも……
――これって手作りだよね? 綺麗にできてる。なんていう名前の花?
そう言えば学くん、自分が選んだはずのお見舞いの花に気づかなかった。少しおかしいなとは思ったのよ。
ジャスミンに気づいたのは、たった一人……
――ジャスミンか。
――わ、わかるんですか? これがジャスミンだって。
――わかるさ。好きな花だ。
低く艶やかな声を思い出して息苦しさを覚え、ぎゅっと胸元を鷲掴んだ。
あぁでもちょっと待って。
――茉莉ちゃん。
――君が笑ってくれたら、僕も嬉しいよ。
あれは学くんの話し方だったような……。
だから彼がお見舞いに来てくれたんだって、ずっと思い込んでたのよ。
どういうことかな。
あの時だけ、学くんがお見舞いに来てくれた?
それとも、私の記憶違い?
ダメだな、こんな肝心なことはっきり思い出せないなんて……
知りたい。
確かめたい。
本当は、何があったのか。
いろんな思いが胸の内で渦を巻き、収拾不能。
じっとなんか、してられない。
私は予定とは別の電車に乗り込み、都内のある場所を目指した。