Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~

私を助けてくれたのが、学くんじゃなかったとしたら。
別の人だというなら、考えられるのは……


――実はさ、あいつ、おじさんの事件が起こった夜、現場にいたんだよ。

――最初に会った時からずぅっと、誰かに似てる誰かに似てる、って思ってたの。


15年前のあの日火事の現場にいた、もう一人の男の子――各務蔵人、そうよ、クロードさんしか考えられない。

私は、クロードさんに助けられたの?

じゃあ、その後お見舞いに来て励ましてくれたのも……


――これって手作りだよね? 綺麗にできてる。なんていう名前の花?

そう言えば学くん、自分が選んだはずのお見舞いの花(ジャスミン)に気づかなかった。少しおかしいなとは思ったのよ。

ジャスミンに気づいたのは、たった一人……

――ジャスミンか。
――わ、わかるんですか? これがジャスミンだって。

――わかるさ。好きな花だ。


低く艶やかな声を思い出して息苦しさを覚え、ぎゅっと胸元を鷲掴んだ。

あぁでもちょっと待って。

――茉莉ちゃん。
――君が笑ってくれたら、僕も嬉しいよ。


あれは学くんの話し方だったような……。
だから彼がお見舞いに来てくれたんだって、ずっと思い込んでたのよ。

どういうことかな。
あの時だけ、学くんがお見舞いに来てくれた?
それとも、私の記憶違い?

ダメだな、こんな肝心なことはっきり思い出せないなんて……

知りたい。
確かめたい。
本当は、何があったのか。

いろんな思いが胸の内で渦を巻き、収拾不能。
じっとなんか、してられない。

私は予定とは別の電車に乗り込み、都内のある場所を目指した。

< 254 / 402 >

この作品をシェア

pagetop