Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~


「……ついにバレちゃったかぁ」

目の前に座った学くんは白衣のポケットに両手を突っ込み、苦笑交じりにあっさりと認めた。

ここは敬心セントラル病院。
学くんが勤める病院だ。

おばあちゃんの病院からの道すがら、“いつでもいいから会いたい”とメッセージを送ったのが2時間くらい前。
幸いちょうど時間が空いていたらしく、着いてすぐ病院内のカフェで会うことができて、火事から助けてくれたのは本当に学くんなのかと問い詰め――今に至る。

「じゃあ、私を助けてくれたのは……」

「もう気づいてるんだろう? ――各務だよ」

重ねて聞けば、諦めにも似たゆるめの答えが返ってきて、私は知らないうちに力が入っていたらしい肩から力を抜いた。

学くんは、記憶を手繰るようにしばらく沈黙した後、当日の詳細を静かに語りだした。

「15年前のあの夜――君の家に駆けつけた僕らは、庭へと回り込んだ。そっちの方が窓が大きかったから、そこから中に入れないかと思ってね。でも1階に炎が見えて、とても無理だとわかって。僕はすぐに消防に連絡した。その時だよ。各務が2階の窓から君が見えたと言い出したんだ」

クロードさんの行動は早かった。
すぐに庭の物置から梯子を見つけてきたそうだ。
庭木の手入れのためにそこから出して使っていたのを、覚えていたみたい。

「何度も危ないからやめろ、消防車が到着するまで待てって止めたよ。でもあいつは、『間に合わなかったら一生後悔する』って取り合わなかった」

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