Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~

「あ、ええとっ……スミマセン、つまんないこと言って……」

しおしおと可哀そうなくらい肩を落とす営業マン君に、今度はこっちが慌てちゃった。

「いえいえ、すごく面白かったですよ! ほんとに!」

「…………無理させてすみません。次、行きましょうか……」

気まずい雰囲気のまま、歩き出す私たち。

あーしまった。せっかく場を盛り上げようと頑張ってくれたんだから、もうちょっと笑ってあげたらよかった。
お父さんのダジャレだって、愛想笑いくらいしてあげたものだった。

でも仕方ないじゃない、どこで笑っていいか全然わからなかったんだもの――とそこで、ふと考えてしまった。

前に笑ったのって、いつだったっけ?

声を出して、お腹を抱えて笑ったの、いつ?

仕事探しや部屋探し、犯人探し。
忙しく充実してるように見えて、実際は一人ぼっち。
会話すら、ほとんど誰とも交わさないような生活で……

震える手で口角をぐにっと手で持ち上げてみる――手を放す。
すぐにだらっと垂れてしまう。

嘘、私……笑えない?

ぎこちない歪な形に歪んだ口元を、震える手で覆う。
すっと、胸のあたりが冷えていく心地がした。

笑えない。
笑えない。

笑えなく、なってしまった。

どうして……なんて、考えるまでもない。
あなたがいないと、私、笑えないんだよ、クロードさん。

ぐ、とこみあげてきた何かを、無理やり飲み下す。

頑張らなきゃ。
こうなることは覚悟してたじゃない。

これからずっと1人きりなんだし、泣き言なんて言ってられない。

大丈夫。
いつかはきっと、新しい環境にも慣れるから――


RRRR……


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