Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~
「なっ……」
いつもはあまり感情を露わにしない静かな眼差しが、今はまん丸く見開かれていて、なんとなく留飲を下げる私。
「父の事件についてクロードさんが知ってること、全部教えてください。それが離婚の条件です。お金なんていらない。教えてくれないなら離婚もしないし、もちろん海外旅行になんて行きませんよ?」
早く高橋さんと結婚したいでしょう?
だったら教えてくれますよね?
もともと離婚を言い出したのは私の方なんだから、めちゃくちゃな言い分だとはわかってる。
自分でもよくこんな脅迫まがいなこと言えるな、と言ったそばから若干引いてるくらいだ。
ただ、彼一人を黒幕に立ち向かわせる気はない。
そんなの絶対に嫌だ。
私だって、当事者の一人なのだから。
強い気持ちを視線に込めて、その人を見つめる。
すると。
「茉莉花……」
あっけにとられたようにつぶやいた彼は、こめかみを指先で押さえ、ゆるゆると首を振った。
「いいか、これは君が考えているよりずっと根深い因縁が複雑に絡んだ事件なんだ。これ以上君の人生をめちゃくちゃにしたくない」
複雑? なにしろ兄妹ですもんね。
もう知ってるから大丈夫ですよ――と眉をひそめて苦悩する彼へ、すぐにも教えてあげたくなったけれど。
キスとかそれより先のことをしてしまってる以上、その話題は気まずいよね。
ここは黙ってスルー、が正解だろう、と我慢することにした。
「もう十分めちゃくちゃになってますから、今更でしょ? 一緒に戦わせてください。そうしないと、私だっていつまでも気持ちに区切りがつけられません」
いつまでも、あなたを想い続けてしまう。