Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~

言葉にできない気持ちを喉の奥へ押し込んで、強く彼を見つめる。

「…………」

が、彼の方も引きそうにない雰囲気。
一応夫婦だったから、なんとなくわかる。彼は結構頑固なのだ。

「……教えていただけないなら、いいですよ。そのまま、計画を実行に移すだけですから」

わざと冷たく言い、「停めてください、降りまーす」と運転席との仕切りをコンコン叩こうとして――その手を大きな手に掴まれた。

そのまま強い力で引っ張られ、ぐるりと視界が回る。

「っ!?」

半拍後には、座席に押し倒されていた。

「なな何するんですかっ」

「ったく、俺がどれだけっ……」

忌々し気に言いながら彼が覆いかぶさってきて、そのまま強引に唇が塞がれた。

「ぅんんーーっ」

とっさに歯を食いしばって阻止しようとするも、コート越しに身体をまさぐられて、驚きのあまり大きく息を吸い込んでしまった。
その隙を見逃す彼じゃない。

歯列をこじ開けるようにして分厚い舌が入り込み、逃げ惑って縮こまる私のそれを絡めとる。

ピチャっ……くちゅ、と生々しい水音が車内へ漏れる。

信じられなかった。
どうして、なんで、と同じ言葉だけがパニック気味な脳裏を掠める。

なんでこんなことするの?

罰、のつもり?
彼に逆らって、犯人探しをしたりして。

でもでも、私たちは兄妹でっ……こんなの、許されないのに。

「はぁ、ダメっ……です、も、やめっ」

無我夢中で重たい身体の下から逃れようとするも、もちろん1ミリだって動かせるわけがない。

すぐに抵抗する気も失せるほど激しいキスに飲み込まれてしまい、思考回路がプスプスと異常を訴える。

「茉莉花」

熱い囁きとともに上唇、下唇を戯れるように交互に啄んでから、再び深く重なり、貪ってくる。

< 286 / 402 >

この作品をシェア

pagetop