Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~
言葉にできない気持ちを喉の奥へ押し込んで、強く彼を見つめる。
「…………」
が、彼の方も引きそうにない雰囲気。
一応夫婦だったから、なんとなくわかる。彼は結構頑固なのだ。
「……教えていただけないなら、いいですよ。そのまま、計画を実行に移すだけですから」
わざと冷たく言い、「停めてください、降りまーす」と運転席との仕切りをコンコン叩こうとして――その手を大きな手に掴まれた。
そのまま強い力で引っ張られ、ぐるりと視界が回る。
「っ!?」
半拍後には、座席に押し倒されていた。
「なな何するんですかっ」
「ったく、俺がどれだけっ……」
忌々し気に言いながら彼が覆いかぶさってきて、そのまま強引に唇が塞がれた。
「ぅんんーーっ」
とっさに歯を食いしばって阻止しようとするも、コート越しに身体をまさぐられて、驚きのあまり大きく息を吸い込んでしまった。
その隙を見逃す彼じゃない。
歯列をこじ開けるようにして分厚い舌が入り込み、逃げ惑って縮こまる私のそれを絡めとる。
ピチャっ……くちゅ、と生々しい水音が車内へ漏れる。
信じられなかった。
どうして、なんで、と同じ言葉だけがパニック気味な脳裏を掠める。
なんでこんなことするの?
罰、のつもり?
彼に逆らって、犯人探しをしたりして。
でもでも、私たちは兄妹でっ……こんなの、許されないのに。
「はぁ、ダメっ……です、も、やめっ」
無我夢中で重たい身体の下から逃れようとするも、もちろん1ミリだって動かせるわけがない。
すぐに抵抗する気も失せるほど激しいキスに飲み込まれてしまい、思考回路がプスプスと異常を訴える。
「茉莉花」
熱い囁きとともに上唇、下唇を戯れるように交互に啄んでから、再び深く重なり、貪ってくる。