Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~
「はぁっ……」
気持ちいい。
気持ちいい。
否応なく自分の中から引き出される快感。
同時に、固い殻がぽろぽろはがれるように、必死に閉じ込めていた彼への狂おしいほどの想いが、いとも簡単に暴かれていく。
こんなの間違ってる。
間違ってるのに、なのに。
あぁ、私はこんなにも、彼が好きだ――
コクッ
え?
唾液かと思って飲み込んだそれが、固形だったような気がして、束の間ぼんやりとながら理性が戻ってくる。
瞼を上げれば、こっちを見下ろす端正な顔が視界へ映る。
その眼差しは、やるせなく苦し気な色に染まっていて……
「く、クロード、さん? 今、何っ……」
しまった。何か、飲まされた?
薬?
「すまない、茉莉花」
伸びてきた彼の手が、頬を撫でてくれる。
大きくて、温かくて、優しい……
あれ。
身体が、重たい。
沈んでいく。
痛みはない。ただ霞みがかった様に、思考が急速に曖昧に、薄れていく感覚。
指が、動かない。
「茉莉花、俺は、君を――」
澄んだ眼差しが近づき、額へと優しい唇が触れる。
私の意識は、そこで途切れた。