Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~
え、何、どういうこと?
なんで彼女がここにいるの?
狼狽えるあまり棒立ちになってしまう私を、「とりあえず中へ戻ってもらえるかしら」と彼女は穏やかな口調で促した。
「あなたの質問に答えてやれって、クロードから頼まれてるの。いろいろ聞きたいことあるんじゃない?」
な、何、このフレンドリーな空気。
私がクロードさんの妻だって、わかってるよね?
もうすぐ元妻だけど。
選ばれた女の余裕ってやつかな――なんとなく嫉妬と反発を感じてしまいつつ、私は戸惑いの視線を向けた。
「本当に答えてくれるんですか? なんでも?」
「んー質問によるけど、今の時点で可能な限りは答えるわよ。黙ってたら素人探偵が何をしでかすかわからないからって、彼も心配してたし」
し、素人探偵……私のことか。
「わたしはね、あなたのお父様の事件を追うクロードを、ずっと傍でサポートしてきたの。だから、いろいろ知ってるのよ」
傍で、サポート……
2人の親密さを感じさせる台詞は気になったし、早く彼を探しに行きたい気持ちはやまやまだったものの、ここは聞きたいという気持ちが勝った。
しぶしぶもう一度室内へ戻り、さっき着たばかりのコートを脱いでソファへ座る。
「まずは何か飲みましょ? 何がいいかしら? 大抵の飲み物は用意できるわよ」
「じゃあ……コーヒーで」
「キリマンジャロでいい?」
「はぁ、なんでも大丈夫です」
疲れの滲む声で答え、タブレットにオーダーを入力する高橋さんを待つ。
どうやらそれがバックヤードオフィスと繋がっていて、注文ができるらしい。