Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~
「どうされました?」
案の定、例のいかついSPがすぐに声をかけてきた。
「ごめんなさい、シャワーを浴びようと思ったんですけど、お湯がでなくて。ちょっと見ていただけませんか?」
「タブレット端末からメイドに――」
「壊れちゃったみたいで、動かないんです。お願い、もう全部脱いじゃって、こんな格好なの。寒くて風邪ひいちゃう」
素足を見せて両手を合わせると、彼は戸惑ったように視線を逸らし、ツルツルの頭に手をやった。
「はぁ、しかし自分もよくわからないかも……まぁちょっと見てみましょうか」
「お願い! 助かります!」
「バスルームは……」
「ベッドルームの、そのまた奥です」
入って行く背中に、両手を合わせてごめんなさいと謝っておく。
それから迷いを振り切るように全速力で廊下を走り出した。
どこかに、パーティーの時使った従業員用のエレベーターがあるはずだ。
それなら地下まで一気に行ける。
私はバスローブの紐を解きながら、廊下を素足で駆け抜けた。