Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~
あのパーティーに来てたってことは、彼の勤め先である大東物流がリーズグループの傘下か、あるいは提携してるってことなんだろうけど。
事件が起きたのは15年前。
その頃から、彼自身がリーズグループに関わっていたってことよね。
一体どこに、グループへの恨みにつながる原因があったっていうの?
「さぁ、日本語でいう“ネコをかぶる”のももう終わりだ。来るかどうかはほぼ賭けだったが、まさか本当に一人でやってくるとはな。随分と間抜けなことだ」
満足そうに微笑みながら、彼の手がスーツの内側へ伸びる。
ドキッとして、私は慌ててカバンの中でトウガラシスプレーを握り締め――相手の手に拳銃が握られているのを目にして、全身から力が抜けていくのを感じた。
ドラマの中でしか見たことのない黒光りするそれが、私に狙いをつけていた。
そこで遅まきながら、私は富田が銃で殺されたことを思い出す。
トウガラシスプレーなんて全然役に立たないじゃない!
青ざめる私を見下ろして、相手は鼻歌でも歌い始めるんじゃないかってくらい愉快そうに微笑む。
「もしかして防犯用の武器でも持ってたのかな? トウガラシスプレーとか?」
うぅ、バレてる……。
どうしよう。
どうしよう。
やっぱり一人でなんて立ち向かえるはずがなかった。
クロードさんっ……
絶望の中で、愛しいその人へ助けを求めたくなる自分を、それはダメだと戒める。
一人でここまで来ちゃったのは、私の責任だ。
自業自得。自分でなんとかしなきゃならない。
ガクガクと震えるばかりで力が入らない足を恨めしく見下ろして、唇を引き結んだ。
考えろ。
考えろ。
どうにかしてここから逃げないと……
暖房のない室内は凍えるほどの寒さなのに、全身がじっとりと嫌な汗で湿っている。
わからない。
何も思いつかない。
一体どうすればっ……
「もう止めてっ! 明良さんっ!!」