Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~
視界が涙で滲む。
あぁもう、泣いてる場合じゃないでしょ!
どうしよう。
どうしようっ!!
心の中で叫んだ時。
「茉莉花っ!!」
こっちへと駆けてくるクロードさんが見え――その後は、一瞬だった。
視界がさっと暗くなって。
パンッ!
想像以上に大きな破裂音が轟き、とっさにギュッと目を閉じた。
「まり、……」
囁くような声が聞こえるのと、その身体が私の方へ倒れてくるのはほぼ同時だった。
支えきれずに、私たちは一緒に畳の上に崩れ落ちる。
ふわりとエキゾチックな香りが自分を包み込み、ドキリとした。
「クロード、さん? クロードさん!?」
無我夢中で彼の身体の下からはい出し、視界がクリアになって――呼吸が止まるかと思った。
ぐったりと四肢を投げ出す彼の黒いジャケットの胸部分に、濡れたようなシミがある。
そしてそれは、今もじわじわと広がっている。
恐る恐るそこへ触れると、指先が真っ赤に染まった。
血……まさか、私を庇って……?
心臓が不吉なリズムを刻み、さっきまでの比じゃない恐怖が全身を襲う。
嘘でしょ。
嘘でしょ、そんな……っ