Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~
19. 邂逅 クロードside
「茉莉花っ!!」
叫んだ時にはもう、身体が勝手に動いていた。
全速力で室内へ飛び込んで、銃口の前へ――
パンッ!
長閑な田舎家に、ひどく不釣り合いな音が響き。
スローモーションのようにすべての映像が傾いて、自分の身体が自分のものじゃないように沈んでいく。
「まり、……」
次の瞬間には、彼女を押しつぶすようにして、一緒に床へ倒れていた。
「クロード、さん? クロードさん!?」
あぁ彼女の声だ。助かったんだな、君は?
視界に、怯えたような茉莉花が映る。
俺の胸へ手を……血にまみれた指先を見つめて、震えている。
あぁ、俺は撃たれたのか。
やはり、誰か連れてくるべきだった。
ユキに散々応援を待てと言われたのにな。
後先考えずに一人で追ってしまったのは俺自身の責任。自業自得だ。
茉莉花は知らないだろう。
俺が贈ったアクセサリーにGPSが仕込まれていたこと。
許してくれるといいが。
どこか他人事のように考える。
世界のすべてがぼんやりと、曖昧に光を失い、揺れていた。