Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~

「絶対死なせない! いいか、茉莉ちゃんを一人にして逝くなんて許さないからなっ!!」

頼む。
ゆっくり眠らせてくれ。

ひどく身体が重たいんだ。

もういいだろう?
苦しいんだよ。

焦がれ続けた相手がこんな近くにいるのに、ろくに触れることもできず、愛を告げることもできない。
もう、限界なんだ。

よく頑張っただろう?

彼女はまだ清いままだ。
最後の最後で、膨れ上がった欲望をなんとかねじ伏せた俺の理性を褒めてくれよ、藤堂?

言っておくが、お前のためじゃない。彼女のためだ。
俺の醜い欲望で、彼女を汚したくなかっただけ。

彼女のこと、幸せにしろよ。

俺の太陽、俺の希望、俺の生きる意味、俺のすべてである女性――


「クロードさんっっ!!」


茉莉花、大丈夫。
この想いを、君には告げない。

告げてしまえば、優しい君はきっと俺を忘れられなくて苦しむだろうから。

俺はこの想いとともに逝く。

君に伝えたいのは、一つだけ。

どうか笑っていてくれ。
俺は、君の笑顔が好きなんだ。

初めて会った、あの日からずっと――……


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