Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~

俺の言葉にかぶせるように、茉莉花の声が響いた。

必死の形相で身を乗り出す彼女の目からは、ぽろぽろっと涙が零れ落ちる。
クリスタルのようなその雫の美しさに一瞬見惚れてしまった俺は、内容を理解するまで時間がかかった。

え、今なんて……?

固まる俺の前で、顔をくしゃっと崩した彼女が言う。

「わ、わかってます! クロードさんが私と結婚してくれたのは、父の死に責任を感じてるからだって。だから、離婚は受け入れます。でもっ……私はあなたの傍にいたい。好きだから。大好きだから! クロードさんが撃たれて倒れた時、本当に自分の身体が半分もげちゃったみたいに痛くて辛くてたまらなくて……私、もうあなたがいないとダメなんです。妻じゃなくていいです、お世話係とか家政婦とか、呼び方はなんでもいいんですけど! せめて、あなたが再婚するまでとか――っ」

あぁくそっ……!
それ以上聞いていられなくて、たまらず腕を引き、強く抱きすくめる。

傷跡がズキッと痛んだが、それを凌駕する喜びですぐに胸がいっぱいになった。

「すまない」
耳元で囁くと、彼女は震える唇をきつく引き結び、身体を固くしてしまう。
あぁしまった、言い方を間違えた。
俺も大概動揺しているらしい。

仕方ないだろう。
なんだか夢の中にいるようだ。

「すまない、俺が言わなきゃいけなかったのに、君に言わせるなんて」

「く、クロード、さん?」

彼女の両頬を押さえて上向け、不安げに瞬く双眸と視線を合わせる。
不格好に震えた手に、どうか気づいてくれるなと祈りながら、ただ真っすぐ、自分の想いを口にする――


「愛してる、茉莉花」


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