Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~

――やだ、やだクロードさんっ!

――まりか……わらって、くれ……

――こんな時に笑えるわけないじゃないですかっ!


心臓が凍り付くっていうのは、ああいうことを言うんだろうな。
クロードさんが撃たれてあの真っ赤な血を見た時は、本当に彼が死んじゃうって、恐怖しかなかった。

あの時、学くんが来てくれなかったら、どうなっていたか……。

――茉莉ちゃん、どいて! 僕が診る!

一瞬、幻覚が見えたのかと思った。
だって、まさか学くんがあんなタイミングよく現れるなんて、誰が想像できる?

後から、知依ちゃんが香坂の目を盗んで香ちゃんに連絡を取ってくれたせいだと判明したのだけど。
あの時はただただ、びっくりしたなぁ。

もちろん、それで即一件落着とはならなかった。
天才ドクターの処置があっても、クロードさんの状態はかなり危なかったらしい。

いつ何が起こっても不思議じゃない、という一進一退の日々。
ICUを出られた後も依然目を覚ますことはなく、ずっとこのままだったらどうしようって……

祈ることしかできない自分が、歯がゆくてたまらなかった。

だからあの日、彼の瞼が微かに動いて、開いて、ゆっくりとあの宝石みたいな瞳が現れて、いろんな感情が爆発した。


――クロードさんっ!? クロードさん、わかりますか!? 茉莉花です!  ここにいます、わかりますか!? あの、誰か! 誰か来てください、クロードさんが目を開けたんです!! 意識が戻ったんです! すぐにドクターを呼んで!!

大泣きしながら、もう大騒ぎしちゃったな。

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