Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~
クロードさんっ? もう帰って来た!?
今何時? だってまだ8時前だよっ?
ご飯食べてくるって言ってたのに、早すぎないっ!?
アワアワと硬直したままパニックに陥る私を試すように、廊下から『茉莉花?』と呼ぶ声が聞こえる。
「ははいっ! お帰りなさいクロードさんっ!」
『部屋にいるのか?』
パタパタとスリッパの音が近づき、続いてコンコンとノック音。
あられもない姿で立ちすくむ私は、絶体絶命の大ピンチだ。
「あ、あ、あのっ早いですね、もっと遅くなるかと思ってました」
『あぁ、思ったより早く終わった。それよりちゃんと夜は食べたのか? 今朝、調子がよくなさそうだっただろう』
ま、まさか、私を心配してわざわざ早く帰って……?
な、わけないか。
たまたま、だよね。
それでも嬉しい。
私の事、気にかけてくれて。
「大丈夫ですっ全然!」
『本当だろうな。ここ開けるぞ?』
「ややや、や、あのっ」
すごく嬉しい……けど今は会いたくない、いや会えない……うぅ、複雑。
『茉莉花? 何してるんだ。もしかして本当に体調が――』
「いえ! あ、あの、えっと……少々、お待ちください……」
えぇい、ままよ! とそれまで部屋着の上から羽織っていたカーディガンを引っ掴んで身体の前を隠し、そろそろとドアを開けた。
小さく作った隙間から見上げると、クロードさんの麗しい顔が覗いた。
「すみませんでした。ちょっと早く休もうかなと着替えてて……」
言ったそばから、しまったと思った。
彼がぐ、っと眦を吊り上げたからだ。
「やっぱり体調悪いんじゃないか。なぜ早くそう言わない!?」
怒ったように言ってドアを開けようとするから、ひぃいいっと慄いた。
やだやだやめて! こんなところでオレ様発揮しないでぇええっ!
「だ、大丈夫ですっ寝れば治りますからぁっ!」
「おい、震えてるぞ! 立てないくらい悪寒がひどいのか!?」
ドアノブを両手で必死に押さえたけど、力で叶うはずもない。
「ひゃあああああっ」