Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~
ドアに貼り付いていた私は一緒に引っ張られ、勢いのままに彼の胸へドスンっと飛び込んでしまう。
「すす、すみませんっ! 痛かったですよね、ごめんなさいっ!」
固い胸板でへし折られそうになった鼻を押さえて、平謝りする私。
「…………」
けれど、返事は聞こえない。
クロードさんの方だってかなりな衝撃があったはずなのに。
やけに静かだなと思って……ハッと気づいた。
カーディガンが床に落ちている。
つまり……私は今、あの卑猥なベビードール&Tバック姿をクロードさんの視界に晒しているってことで……
しかもリボンが解けて、前身頃はパッパカパーに開いて……
ぎゃあぁああああああっっ!!!
消えたい!
消してほしい、いますぐこの場から!
神様お願い、瞬間移動させてぇええええっ!!
「すすすっすみませんっ!! お見苦しいものを!!」
ショックの余り卒倒しそうになりながら、ガバッと床に蹲る私。
終わった。
妻スコア、地の底まで落ちた。いや、突き抜けて地獄までずぶずぶ。
じわっと潤む視界に、彼の長い長い足が映った。
あの綺麗な顔が軽蔑に歪んでいるかもしれないと考えただけで、気が遠くなりそうだ。
お願いします、こんなアホ妻のことは捨て置いて、どうか立ち去ってください。
夜が明けたら荷物をまとめて出ていきます。
出ていくから、とりあえず今は早く一人にしてぇえーー!
小さく縮こまったまま心の中で絶叫――、
ふいに、背中に柔らかな感触を覚えハッと目を開けた。
そして自分がカーディガンを羽織ってることに気づく。
クロードさんがかけてくれたんだ。