Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~

肌触りのいいカシミヤから伝わるぬくもりになんとなく肩の強張りが解けた、次の瞬間。

「ひゃあっ」

私の身体はふわりと浮いていた。

「く、クロードさんっ!?」

こ、これはっお姫様だっこというヤツ!?
ななななんでっ!?

「降ろしてください! お重いので!!」

ジタバタする私を見下ろしてくるのは、ごく落ち着いた眼差し。
「全然重くない。舌を噛むから黙ってろ」

「っ……」

黙ってろ、と言われましても……

布越しに感じる筋肉質な腕を思いっきり意識して、ガッチガチ。
顔なんてとても上げられない。

そんな私に気づいたかどうかはわからないが、とにかく彼は欠片も狼狽えることなく室内に入り、ベッドへ私の身体を慎重に降ろした。

「あれだけ叫べれば大丈夫だな。体調がよくないのに、もうそんな薄着はするなよ」

若干不機嫌? というより呆れ気味の声音が聞こえたと思ったら、丁寧に掛け布団をかけて、上からぽんぽんと軽く叩いてくれた。
まるで眠れないって駄々をこねる子どもにするみたいに。

「じゃ、お休み」
「お、お休み、なさい……?」

え、え……えぇえええ?

待って待って、それだけ?
え、え、それだけですか?

ちょっとぉおおーーーっ??


パタン。

静かに閉まったドアを、ただただ唖然と見つめてしまう私。

あれが、妻の半裸を見た夫の反応?
ほぼ無視? スルー?

“そんな薄着するなよ”?? コメントそれだけ?
一応、新婚なんですけど?

いやそれはさすがに、ないんじゃない……?

もしかして、まさかと思うけど。


クロードさんって…………………………不能?



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