Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~

あのハレンチベビードール事件の後も、私たちの関係に特に変化はない。

翌朝クロードさんは体調こそ気にしてくれたものの、あの下着姿については一言も言及せず。つまり、黙殺された。完全に。

これは本気で私に興味ない感じでは……?
やっぱり愛人がいる? 速水さん、とか?

『あんな貧相な下着姿見せられて、爆笑するかと思ったな』
『社長も可哀そう。あんな人、さっさと離婚すればいいのよ』
『そうした方がいいのかもしれないな。やはり俺には君がいればいい』
『あん、社長ダメよ、そんなところ触ったら……』

ぶるるっ……どうしよう。
どうしよう。

今まで可能性を考えなかったわけじゃないのに、いざ現実が目の前に突きつけられたら不安が押し寄せてきた。

彼が不能、かどうかはさておき、このままじゃイチャイチャとか子どもとか、それどころじゃない。
結婚生活が本気で危うい。
離婚までノンストップで行っちゃいそう。

そんなの嫌よ。
まだ始まったばかりなのに!


そこで私はネットで調べまくった。
“夫婦”“もっと仲良く”、等々のワードで検索したのだ。

そして翌日からさっそく、収集した情報――“旦那様ともっと仲良くなるための虎の巻”を実践している。

特に集中的に取り組んでいるのが、“その2夫婦の会話を増やす”。

家にいる時は天気とか芸能ネタとか、他愛もない話題をたくさんこっちから振ったり、夜はできるだけ「お帰りなさい」って言えるように待ってたりとか。

今までは、彼も忙しいからって遠慮してた部分があったのだけど。
そんなこと気にしてたらいつまでも先に進めないもの。

だから、少しずつでも関わる時間を増やしていけるように努力中なんだ。

そのかいあってか、1週間経つ頃からなんとなく、前より視線が合うようになった、気がする。特に私が笑っている時。
気がする(・・・・)だけだけど。

さぁ、問題は次なのよ。“その3スキンシップを増やす”。

「あ、じゃあこれも運んでもらえますか?」

「あぁ、これか」

ヨーグルトの器を受け取ってくれた彼の腕にさりげなく(・・・・・)触れるべく、ゴクッと息を呑み、気合を入れる。
そして、「ありがとうございます」と言いながらそろそろ手を伸ばす。

よし、もう少しだ――

「ん? どうした?」

「……ぃいえ~、なんでも、ないです」

不自然に伸ばしたまま固まった腕を、ぎこちなく戻して胸へ抱く。
あぁまた失敗。くぅ。

< 49 / 402 >

この作品をシェア

pagetop