Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~

今日の朝食は、ご飯に豚汁、卵焼き、ひじきの煮物、フルーツヨーグルトという和朝食。

エプロンを外して、彼の向かい側の椅子へ座った。
いつも通り一緒に手を合わせて「「いただきます」」。
それからクロードさんは、ごく慣れた様子で箸を手に取る。

その凛々しい姿勢や正確な箸使いを見るにつけ、やっぱり彼は日本人なんだなぁってしみじみ思う。
もうずっと見てられるくらい美しい。
嚥下する時の喉ぼとけの上下が、特に色っぽ――

「ん? 何だ?」
「い、いえっお味はどうですか?」

見惚れていたことを誤魔化すように急いで質問を返すと、「あぁ美味いよ」と眦がわずかに下がって柔らかな表情になる。

「茉莉花は料理が上手いな」

茉莉花は料理が上手い料理が上手い料理が上手い料理が上手い……
脳内にエコーつきでこだまする美声に、テーブルの下で拳を握って悶える私。

おしゃべりな人ではないからこそ、シンプルな一言が嬉しいのよね。

「外食が続くと胃がもたれるから、こういう優しい味付けがありがたい」

おぉ、今日はなんと、追加のお褒めの言葉までっ。

「ぁありがとうございますっ」

うわ、声が裏返っちゃった。

「そ、そんなに褒められたら、調子に乗っちゃいますよ? お弁当とか、作っちゃったりして」

彼が愛妻弁当なんてガラじゃないことはわかってたけど、テンション高めのまま冗談交じりに口にしてしまった、ら。

「え、いいのか?」

予想外のくいつき。
え、ウソ、何この反応。ホントに作っちゃいますよ?

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