Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~
「迷惑、じゃないですか?」
「そんなわけないだろう。忙しいと外へ食べに出る時間がとれなくて……あぁでも、茉莉花の朝の負担が増えるなら無理にとは――」
「作りますっ! ぜひとも作らせてください!」
今度は私の方が食いついちゃった。
だって好みのおかずについてとか、自然と話題が増えるし。
オフィスで愛妻弁当、なんてあの秘書さんにもいい牽制になる。
考えれば考えるほど、どうして今まで思いつかなかったんだろうって悔しくなるほど最高のアイディアだ。
「働いてた頃は毎日自分用のお弁当作ってたので、全然負担じゃないです。あっ、もちろん中身は夕食の残り物とか、作り置きとか、そんな感じですよ? 期待しないでくださいね?」
慌てて予防線を張る私へ視線を合わせ、クロードさんはニヤッと口角を持ち上げる。
「無理だな、期待しかない」
「え、えぇえ? プレッシャーかけてます?」
「いやいやまさか」
顔を見合わせて、一緒に「ぷはっ」て噴き出しちゃった。
すごい、クロードさんが声出して笑ってる。
それは初めて感じる、和やかな空気で……
これ、これなのよ!
私が求めてるのは、こういう感じ!
踊り出したい気持ちを必死に抑えて、食事を再開。
平静を装った顔が気を抜くとへにゃっと崩れてしまいそうで、時々ぴくッと頬が引きつっていたけど、きっと彼は気づかなかった、はず?