Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~
「あぁそうだ」
いつにも増して会話の弾んだ食事を終え、一緒に食器を食洗器へと運んでいたら、クロードさんがふと私を振り返った。
「今夜は友人と会ってくるから遅くなる。夕食はいらないから」
「そうですか。あ、またボストン時代のシェアメイトさんですか?」
大学時代、ボストンのシェアハウスで一緒に住んでいたメンバーが今現在偶然にも全員東京に住んでいるとかで、たびたび会ってるみたい。
紹介してくれないんだ、って少し悲しくなったことを思い出しつつ聞くと、珍しく彼がわずかに口ごもる。
「いや……そいつらとは別だ」
歯切れの悪い口調。怪しい――もっと聞きたい気持ちはあったものの、なんとか堪えた。
“旦那様ともっと仲良くなるための虎の巻 その4必要以上に干渉しない”、が頭を過ったからだ。
干渉しすぎて“重い女”になるのはNG。がまんがまん。
「そうなんですね、了解しました。飲みすぎないでくださいね」
こちらの返事であからさまにホッとした表情を見せる旦那様に、きゅっと胸は痛んだけれど、気づかないふりして私は後片付けに専念した。
一歩前進して、一歩後退した気分。
旦那様と仲良くなるって……なかなか難しいな。