Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~

その日の午後、私が向かったのは恵比寿。
山手線の改札を出てすぐ、「茉莉花、こっちこっち」と手を振る真っ赤なコートとロングブーツ姿の美女に気づいた。
今日も香ちゃんはおしゃれだなぁ。

「香ちゃん! ごめんね、つきあってもらっちゃって」

「いいのいいの。あたしも出会いを求めて何かやりたいなーって思ってたところだったし」
「あはは、出会いかー。あるといいねぇ」
「茉莉花はダメよ」
「わかってるよ」

笑いながら一緒に歩き出す。

私たちが向かうのは、この近くにあるゴルフスクール。
“旦那様ともっと仲良くなるための虎の巻 その5共通の趣味を持つ”を実践する予定なのだ。休日一緒に練習したり、教えてもらったりできたら素敵じゃない?

ただし全然適性がなかったら、呆れられて逆効果。まずは彼に内緒で体験レッスンにトライしてみて、そこらへんを見極めようって計画だ。

とはいえ、ゴルフスクールなんて都内にめちゃくちゃある。どこを選べばいいのかネットで調べてもよくわからなくて、香ちゃんと知依ちゃんに相談してみたんだ。

そうしたら知依ちゃんが、自分の彼氏が通ってるスクールはどうかと教えてくれて。香ちゃんからも『やってみたい!』と申し出があり、そこで今日のレッスン行きとなったわけ。

ちなみに平日にも関わらず香ちゃんが私と出かけられる理由は、彼女の職業にある。シェルリーズホテルという超高級ホテルでフロントスタッフとして働いている彼女はシフト制で、事務職の知依ちゃんと違い、曜日に関係なく休みがあるのだ。

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