Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~
「え、まさか不倫とか心配してるの? だって、学くんだよ?」
何度も言うけど、彼はアメリカ帰りのエリートドクター。
私なんかに興味を示すはずはない。
何かあるかも、なんて想像するのもおこがましいというものだ。
「茉莉花って、時々天然だよね」
こめかみを押さえ、はぁと大きく息をつく。
「考えてみ? 茉莉花だって、旦那とあの秘書のツーショットは嫌だったでしょ? それを旦那の立場に置き換えてみなよ。妻と他の男が一緒に会ってたらどう? 例え本人たちが何もないって主張したところで、いい気はしないんじゃない?」
「そっか、なるほど……」
香りちゃんが言いたいことはわかるよ。
けど、じゃあ彼が嫉妬してくれるかって言うと……どうなんだろう。
距離を縮めようと努力中、とはいっても、まだまだ成功してるとは言い難いし。
この前みたくノーリアクションだったりしたら、ほんとに立ち直れない……。
「茉莉花?」
「え? あ、ううん。なんでもない。じゃあ、念のため先にちょっと確認してみるね」
「そうしてそうして。で、もしOKなら教えて。茉莉花の連絡先、兄貴に伝えるから」
「うん、わかった」
笑顔で頷いたところで、香ちゃんが腕時計に目を落とした。
「んで、この後どうする? まだ時間ある?」
「うん、大丈夫。彼、今日は遅くなるって言ってたし」
「そっか。なら、買い物つきあってくれない?」
「もちろん! 私も買いたいものあるんだ」
そうそう、クロードさんのお弁当箱を買わなくちゃ。
それと――クリスマスプレゼントも!
よし、と気持ちを入れ替えて、私は残っていたコーヒーを飲み干した。