Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~
ごくカジュアルなルームウェアの上下を着ているだけなのに、私の格好も似たようなものなのに、この醸し出す雰囲気の違いはなんだろうか――って、今はそんなことどうでもいいか。
自分を戒めて視線を彷徨わせていたら、読んでいたタブレットを脇へ置き、彼は私へと身体を向けてきた。
その眼差しが強い意志を帯びて、こちらを見つめる。
「茉莉花。何か言いたいことがあるんだろう。ちゃんと言え」
「えっと……」
言いたいこと、いや聞きたいことならある。
すごくすごく、聞きたいこと。
「あの……ぅ」
口ごもる私を責めるわけでもなく、クロードさんは辛抱強く耳を傾けてくれている。
いつもと違う私を心配して。
厳しい口調に隠されたその優しさがわかるから、私の口はますます重たくなり、本当のことが言えなくなってしまう。
「えと……ぉお弁当! お弁当、どうでした? 今日の」
「弁当? あぁ美味かったよ。いつもありがとうな」
束の間、その顔が緊張を解いて綻ぶ。
お弁当は初日から大好評で、帰宅してからいつになく饒舌に褒めてくれて。
作ってよかったって、泣きそうになったくらい嬉しかった。
あのことがなかったら、もっと会話を弾ませて距離が縮まっていたかもしれないのに……。
「今日は特にハンバーグが絶品だった」
「そうですか? ちょっとあのハンバーグ焦げちゃって、見た目が良くなくてごめんなさ――」
「茉莉花、でも言いたいことはそれじゃないだろう」
あぁやっぱりダメだった。
なんでわかっちゃうの?
あなたはエスパーですか?
「それは、その……」
私は二の句を継げず、ついに黙り込んでしまった。
本当は、聞きたいのに――1週間前の夜、車の助手席に乗せていた女性は、誰ですかって。