Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~

「オレがもうあんまりシフト入れなくなるからさ」

そっか、それで柊馬の代わりの人をマスターが探してきたってことね。

「準備は進んでるの?」
「向こうの学校の編入基準スコアが結構厳しくて。なんとか春までにはパスしたいと思ってるんだけど」

「へぇ、大変なんだぁ」

春、かぁ……。

その頃、私とクロードさんはどうなってるだろう?

春どころか、数日後に控えるクリスマスの予定だって決まってないのに。

特別なことなんてしなくていい。
ただせめて、一緒に過ごしたい。

そう思ってそれとなく予定を聞こうとしているのに、仕事がどうなるかわからないとかなんとかのらりくらり躱されて、未だにはっきりとした答えをもらえていない。

まさか、もう速水さんか、あの助手席の女と約束してたりしたら、どうしよう。
私と結婚したのは、そういう女遊びを隠すため、だったら。

なんだか、あの夜――リビングで押し倒された夜――から、彼との距離がさらに開いてしまったような気もするんだ。
学くんに会うって言ったの、やっぱりマズかったかな。


「柊馬が行っちゃったら、寂しくなるなぁ」

ぼそっとこぼす私を見下ろして、本人が肩をすくめる。

「何言ってんだよ。義兄さんがいるだろ」

「……さぁね。どうなるかわかんない」

「はぁ? なんだよ、喧嘩でもしたわけ? はーんなるほど、それか。不眠の原因は」

「目の下、クマひどいぜ」と指摘されて、う、と言葉に詰まる。
そんなにブサイクかな、私の顔。

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