Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~

「違うの、最近ずっと昔の夢見て……まぁそれはいいのよ、ほっといてっ。ほら、ハイボール! くださいっ」

「はいはい」とあやすように言って、手を動かし始める柊馬。
気になるようで、チラチラとこっちを見てくる。

「マジで結婚生活は問題ないんだな? まぁ別に義兄さん、問題があるようなことは言ってなかったけど」

「え、クロードさんブルームーン(ここ)来てるの?」

目を丸くする私に、「たまにだけどな」と柊馬は頷く。

知らなかった。
一緒に来たかったな。

誘ってくれればいいのに……

と、しょんぼり考えて、ハッとする。

「まさか私と結婚したのはカモフラージュで、本当の目当ては柊馬だった、とか……?」

だって、ほら。
彼がゲイとかバイセクシャルだったら、すべての辻褄が合う。
もしかして柊馬をアメリカに留学させて、向こうで会おうっていうつもりじゃ……


『柊馬、実は俺、本当はずっと前からお前のことが……』
『義兄さんっ嬉しい……オレも姉ちゃんには悪いと思ってるけど……』
『柊馬っ!』
『義兄さんっ』


ぃいいいいいやあああああああーーーー!!!


ペシッ

「痛っ」

ぶたれた額を両手で押さえて涙目を上げると、「絶対アホな妄想してただろ、今」って、柊馬がハイボールのグラスを押し付けてきた。

「ほら、飲め。飲んで全部忘れろ」

「うぅう、飲みますぅ……」

アルコールが回って来たのか、もう頭の中はぐちゃぐちゃだ。


ひどいよ、クロードさん。
私の気持ち、こんなに振り回して。

あの女は誰?
私は一体、何番目なの?

えぐえぐ泣きながら、何度も勢いよくグラスを煽って……段々脳みそが白く溶けていく。

< 73 / 402 >

この作品をシェア

pagetop