Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~
「違うの、最近ずっと昔の夢見て……まぁそれはいいのよ、ほっといてっ。ほら、ハイボール! くださいっ」
「はいはい」とあやすように言って、手を動かし始める柊馬。
気になるようで、チラチラとこっちを見てくる。
「マジで結婚生活は問題ないんだな? まぁ別に義兄さん、問題があるようなことは言ってなかったけど」
「え、クロードさんブルームーン来てるの?」
目を丸くする私に、「たまにだけどな」と柊馬は頷く。
知らなかった。
一緒に来たかったな。
誘ってくれればいいのに……
と、しょんぼり考えて、ハッとする。
「まさか私と結婚したのはカモフラージュで、本当の目当ては柊馬だった、とか……?」
だって、ほら。
彼がゲイとかバイセクシャルだったら、すべての辻褄が合う。
もしかして柊馬をアメリカに留学させて、向こうで会おうっていうつもりじゃ……
『柊馬、実は俺、本当はずっと前からお前のことが……』
『義兄さんっ嬉しい……オレも姉ちゃんには悪いと思ってるけど……』
『柊馬っ!』
『義兄さんっ』
ぃいいいいいやあああああああーーーー!!!
ペシッ
「痛っ」
ぶたれた額を両手で押さえて涙目を上げると、「絶対アホな妄想してただろ、今」って、柊馬がハイボールのグラスを押し付けてきた。
「ほら、飲め。飲んで全部忘れろ」
「うぅう、飲みますぅ……」
アルコールが回って来たのか、もう頭の中はぐちゃぐちゃだ。
ひどいよ、クロードさん。
私の気持ち、こんなに振り回して。
あの女は誰?
私は一体、何番目なの?
えぐえぐ泣きながら、何度も勢いよくグラスを煽って……段々脳みそが白く溶けていく。