Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~

……好き。
好き。

いつの間にか、こんなに好きになっていた。
もう引き返せないほど。

お願いだから、傍にいて。

頑張るから。
あなたに相応しい妻になれるように、もっともっと頑張るから。

だからどこにも、行かないで。

私を、一人にしないで。

お願い、クロードさん――


「……茉莉花、おい茉莉花?」

どれくらい経っただろう。

ぼんやりとした頭に、聞き慣れた低音がかすかに届く。

「茉莉花、茉莉花……駄目だな、これは。随分飲んだんだな」
「義兄さん、すみません。迎えに来てもらって」
「いや、構わない。連絡くれて助かったよ」
「姉ちゃん、最近寝れてないみたいですね。昔の夢を見るって言ってたから、たぶん15年前の事件のことだと思います。事件の後も時々、フラッシュバックっていうか、不安定になることあって」
「そうか……すまなかったな、世話をかけて」
「いえ。姉ちゃんのこと、よろしくお願いします」
「あぁ、彼女のことは大丈夫だから」

それから――大きな手が優しく、私の肩を揺する。

「茉莉花、帰るぞ。立てるか?」

「んー……」

……クロード、さん? 本物?
迎えに来てくれたの? 私のために?

「茉莉花?」

嬉しいのに、頭が半分以上眠りの世界に浸っていて、なかなか身体が言うことを聞いてくれない。

「……立て、ない……おんぶ」

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