Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~
「……っ」
トクントクン……
まるで一つになっちゃったみたいに、彼の鼓動が近い。
抱きしめられてる。
クロードさんに、抱きしめられてる。
半分夢の世界に入りつつも、じわじわ広がっていく幸福感は頭のどこかで感じていた。
あぁやっぱり、この温度を、私は知っている気がする……
いつ? どこで?
あぁ思い出せない……
「茉莉花」
耳に触れる唇がくすぐったい。
まぶたを下ろしたまま身をよじる私の頬を、骨ばった指が引き寄せる。
「これは夢だ」
「ゆ、め……?」
「そうだ、夢。いいか? 起きるなよ?」
「んー……?」
唇に、柔らかいものがふに、っと触れた。
二度、三度、何かを確かめるようにそれはゆっくりと唇を啄み……
ちゅ、ちゅ、とまぶたへ、頬へ移っていく。
ふふ、ちょっとくすぐったいけど、気持ちいー……。
「ったく、そんなカオするな……抑えが、効かなくなるっ……」
眠りに落ちる直前聞こえた熱っぽい囁きは、きっと夢だったんだろう。