Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~
クロードさんが作ってくれた朝ごはんは、最高に美味しかった。
あっさりした薄味で、胃に優しくて。
一口ごとに彼の思いやりが染みる気がした。
完食してエネルギーチャージした私は、さっそくお弁当作りに取り掛かる。
ついでだから、自分の分も持って行こうかな。
一緒に食べられたらラッキーだし、無理だったら帰ってきてから食べればいいし。
よし、と気合を入れ、私はエプロンをつける。
鶏肉があったので照り焼きにして、レンコンのきんぴら、煮物、と作っていく。
ご飯はきのこ類やゴボウを混ぜて炊き込みご飯風に。
クロードさんは私の料理に注文なんてつけたことないけど、どちらかというと和食の方が好きなんじゃないかって気がする。
たくさん感想くれる気がするんだよね。
レパートリー、どんどん増やしていかなくちゃ。
「ん、完成!」
出来上がったおかずを冷ましている間に、次は出かける準備。
オフィスでも浮かないようにきちんとした格好――黒のタートルネックとベージュのフレアスカート――に着替え、メイクもちょっとしっかり目に。
速水さんを意識してるわけじゃないのよ、もちろん。うん。
最後におかずを2個のランチボックスに詰めて、できあがり!
コートを羽織ったら、さぁ出かけよう。
◇◇◇◇
クロードさんのオフィスは、六本木にあるらしい。
地下鉄の駅を出て、前に教えてもらった住所を頼りに歩きながら、あれ、香ちゃんの職場に近いんだなぁ、と呑気に考えて――いられたのは、最初のうちだけだった。
数分後には、近いどころじゃないって、愕然として巨大なタワーを見上げることになる。