Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~
グキッ……!
「った、……」
地面に降りた瞬間足首がヤバい音をたてたが、気にしてる場合じゃない。
激痛の走る足を引きずりながら、死に物狂いで車から離れようとした――
「ふざけんなよっ!!」
しかし、当然スピードが出るわけもなく。
「きゃあっ!」
怒り狂った課長にすぐ追いつかれて腕を引っ張られ、私は地面に勢いよく倒れ込んだ。
「大人しくしてりゃいいんだよ!」
もう一度、分厚い手にきつく口を塞がれて、目の前が真っ暗になるような心地がした。
怖い。
怖い。
苦しい。
――ケホッゴホッ……
――喉が、目が、痛くてたまらない。
――息ができない。
助けて、助けて、誰か……
――助けて、誰か。助けて!
自分の身体が、車の方へと引きずられていくのがわかった。
――死にたくない。お願い、誰か……!!
涙で視界がぼやけていく。
意識が、遠のいていく。
お願い、誰、か……
――茉莉花!!
「茉莉花!!」
声が、聞こえた。