Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~

グキッ……!

「った、……」

地面に降りた瞬間足首がヤバい音をたてたが、気にしてる場合じゃない。


激痛の走る足を引きずりながら、死に物狂いで車から離れようとした――

「ふざけんなよっ!!」

しかし、当然スピードが出るわけもなく。

「きゃあっ!」
怒り狂った課長にすぐ追いつかれて腕を引っ張られ、私は地面に勢いよく倒れ込んだ。

「大人しくしてりゃいいんだよ!」

もう一度、分厚い手にきつく口を塞がれて、目の前が真っ暗になるような心地がした。

怖い。
怖い。
苦しい。


――ケホッゴホッ……

――喉が、目が、痛くてたまらない。
――息ができない。


助けて、助けて、誰か……

――助けて、誰か。助けて!


自分の身体が、車の方へと引きずられていくのがわかった。


――死にたくない。お願い、誰か……!!


涙で視界がぼやけていく。
意識が、遠のいていく。

お願い、誰、か……


――茉莉花!!



「茉莉花!!」

声が、聞こえた。


< 93 / 402 >

この作品をシェア

pagetop