雪恋
「素敵ですね。
さぞかし、素敵な教師だったんでしょうね。

でも、貴女も。
充分に生徒のことは気にかけていらっしゃるのでは?

テストの採点の点数の横の余白に、何かしらメッセージを書くそうじゃないですか。

今だって、生徒の日誌に丁寧にコメントを書いていらっしゃる。

生徒さん1人1人としっかり向き合う姿は、誰かが見ているはずですよ。

僕も、いろいろな職業の方の話を聞けて嬉しいですから。

お話を聞くと非常に堅実でいらっしゃる。

そんな貴女にピッタリな一杯、ウイスキーサワーです。

一気にはお召し上がりにならないように。

それなりに強いお酒ですから」

それなりに強い酒出して、大丈夫か?

そっと後をつけていこうかとも思ったが、それこそストーカーだ。

それにしても。

進路に迷っていた高2の夏、それを見透かしたように、世界史の答案用紙の余白にメッセージが書いてあった。

彼女らしい、トメハネハライがしっかりした、整った文字だったことを今でも覚えている。

『桜木くん、最近放課後になっても顔を見ないね!

また他愛のない話でもしましょう!

いつでも待ってるわ』

そんな文字が綴られていたのを見たときは、小躍りしたくなるほどだった。

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