年下ヤンキーをなめちゃいけない理由
「ってぇな!何すんだテメェ!」
耳をつんざくような怒鳴り声で、我に帰る。
何が……起きてるの……?
嗚咽でまともに呼吸ができなくて、涙で視界がぼやける中で、はっきりと捉えた"声"。
「___うるせぇ」
その声は、昨日聞いた声よりも、もっと低くて、冷たくて。
___怒ってる。はっきりとわかるくらい、差を感じた。
「ガキが、調子乗ってんじゃねぇ!」
二人がかりで殴られそうになる彼は、なんでもないようにその攻撃を交わすと、二人まとめて、強烈な回し蹴りを決めていた。
「ふっ、……うぅ……」
安心からなのか、今まで全く出なかった声をあげて泣く。
だって。
「……海花先輩」
だって。
流くんが、優しく私を抱きしめたから。
涙が止まらない。
無意識に身体中が震える。
そんな私を何も言わずに抱きしめた。
彼の大きな体で。長い腕で、私を包み込むように。
「な、がれくん……っ、う、ぁ……っ」
「……ここにいます」
今、流くんがどんな表情をしているのかはわからない。
でも、流くんの上下する肩や、荒くなった息遣いを聞くと、走ってきてくれたのがわかった。
なんでここがわかったの?
なんで助けてくれたの?
そんな疑問なんて考える暇もなく、ただすがりつくように泣いていた。