年下ヤンキーをなめちゃいけない理由
カラカラ……と、教室の引き戸を開ける乾いた音。
来た……。
ごくりと唾を飲み込む。
「あんたが俺のきょーいく係ってこと?」
そんな緊張も不抜けてしまうくらいのぶっきらぼうな声に、唖然とする。
だってそこには、本当に年下か疑うほどのキラキラした人が立っていたから。
まるで興味がなさげに私に向けられる視線。
目にかかるくらいの、サラサラな金髪。
両耳に一つずつつけられた金のピアス。
そして、整った顔立ち___。
本当に、この人で合ってるの?というのが、私の頭に一番に浮かんだ疑問だった。
___一年の教育係をしてほしいんだ!まともに授業に出席してくれないから、先生もフォローの仕様がないんだ。だから賢い刈谷なら、そいつをやる気にさせられるかと思ったんだが……ダメか?
基本的にイエスマンな私は、先生の頼みを断ることなどできなかったため、仕方なく頼みを受け入れたのだが……。
ま、まさかこんな人だったとは……。
どうやら、あまり授業に出席せず、サボってばかりの一年生らしい。
「……聞いてんの?生きてますか?」
「へっ、……あ、はいっ」
いつのまにか私の前に立ってた彼は、私の目の前でひらひらと手を振って見せる。
「じゃ、じゃあ、勉強を……」
いけない、いけない。人を見た目でなんて判断しちゃいけないよね。
今日はこの一年生に勉強を教えるために___。
「え、まじでやるつもり?」
「え……」
「俺、そもそも勉強とかするつもりないんで。ってか、あんたも俺に構ってると時間の無駄ですよ」
彼は面倒そうに首を傾げる。
まるで「俺が勉強なんてやるとでも?」って、言っているようだった。
「でもこのままじゃ単位が取れなくて留年に___」
「だからいいって。あんたはあんたのことやれよ」
鋭い目で睨まれる。
私はこの人の勉強を教えるためにここに来たのに……。
彼は私に背を向けると、扉に手をかける。
「今日はそれ伝えに来ただけ。明日からも来なくていーよ、どうせ行かねーし」
「なっ……」
ピシャン、と少し乱暴に占められた扉。
な、なんなのこの人……!?
呆然と椅子に座ったままの私は、しばらくその場から動くことができなかった。