年下ヤンキーをなめちゃいけない理由
お互いのライバル
好き、好きじゃない
十一月。
だんだんと涼しくなり、夜は肌寒い季節となっていた。
「海花、おはよう」
「おはよー」
教室に入ると、一番に声をかけてくれるのは、決まって詩織。今日もポニーテールを揺らして、笑顔を見せてくれる。
詩織は、いつも素直だし、有言実行するし。私の憧れなんだよなぁ……。
そんなことを考えながら席に着くけれど、そんなのもつかの間。
「海花ちゃん、呼ばれてるよ!」
私の名前を呼ぶ声が、教室内の騒がしい声の中、私の耳に届く。
え、朝から呼び出し……?
先生かな。
私、何かやらかしたっけ、なんて考えながらも廊下に出ると、そこにいたのは女の子だった。
___かわいい。
そう思った。
大きな目に、色白で綺麗な肌。抜群のスタイル。
まるで、お人形さんのような容姿だった。
そ、そんな可愛い人が、私に用事……?
失礼かもしれないけれど、多分、全く見覚えがない。いや、絶対に。
だってこんなにもかわいい人、もしも関わっていたなら絶対に覚えてるはずだもん。
「あの……刈谷さん、ですよね?」
「え……あ、はい!刈谷です……!」
敬語……?
ってことは、もしかすると後輩だったりするのだろうか。
そう思って足元に視線をやると___やはり。
靴に入っているラインの色で学年を分けているうちの学校。
彼女の方には、青いラインが入っていた。
___と、いうことは、一年生、なのかな。
流くんと同い年だ……。
って、なんで今流くんが出てくるのよ。
「ど、どうかした……?」
「……黒川くんと、どういう関係ですか?」
「……え、」
ちょ、ちょっと待って。
黒川くんって……たしか、流くんの苗字……だよね?
いやいや、それよりも。
本当に……この人誰……!?
いきなりそんなこと聞かれても……と、戸惑っているけれど、女の子は気にも止めずにグイグイと話を進める。
「彼女ですか?」
「えっ、ち、違います!!」
彼女……?私が……?流くんの?
食い気味に否定する。
やばい、顔、熱い……。なんで顔赤くなってるの……!?
自分でも何が何だかわからないまま、「違うよ!」と連呼する。
そんな私を見て、彼女は表情ひとつも変えずに、「そうなんですか」と呟いた。
「な……なんで……?」
なんだかそんな無表情が怖くて、思わず聞き返すと、彼女は首を傾げながら、にこりと微笑んだ。
「___好きなんです、黒川くんのこと」